夜のピクニック

zazou2006-10-25

●帰京以来いろいろと忙しくて日記の更新もままならないのだけど(今夜も終電で帰ってきて軽く酔っぱらっているのだけど)、ようやく島日記二日目を書きます。

長い長い夏休みは終わりそうで終わらないんだ
Summer Sunset 夕焼け空 オレンジ色したまんまる
ドラマつまった 語りすぎた 調子のいいあの色さ
今のこのままで止まっちまいたい そんな僕さ


         フィッシュマンズ『空中キャンプ』


●16日。天気は快晴(11人(+幼児)も人が集まれば、中に一人は晴れ男(晴れ女)がいるということなんだろう)。昨日にもまして暑い。夏はまだ終わっていない。
●レンタカーに4人が乗り込み、残り8人はスクーターにまたがってコテージを出発。対向車にはごくたまにしか出くわさない。青空とサトウキビ畑と時おり視界に現れる海。二日酔い気味だったけれど、バイクで走っているだけで気持ちがいい。潮風が体内に残るアルコールを吹き飛ばしてくれる。
●ぼくらは島を横断して島の反対側のビーチへ到着。浜にぼくら以外の人影はなく、今日もプライベートビーチ気分でスキンダイビング。昨日よりは少し長く潜っていられる。ただ昨日より水が冷たくて体が冷えてきたので早々に浜に上がり、岩場で遊ぶ。カニをつかまえようとしてすんでのところで逃げられ、やっとつかまえたと思ったらそれは死骸で、足が9本あった。波の彼方へ9本足のカニを葬り出し、また岩場を散策。今度は穴のあいた貝殻を見つけて、これはペンダントのヘッドになるかも、と思って、首につけていた革ひものネックレスに通してみる。思った通り、いい感じ。


●一足早く今日のフライトで帰ってしまうナバさんたちとはここでお別れ。10人になったぼくらは、再びバイクにまたがると海岸沿いの通りを北上。道沿いに真っ赤なハイビスカスが咲いている。バイクのスピードを少し緩めて手を伸ばし、一輪紡ぎとってバイクのカゴにつける。舳先に紅いハイビスカスを揺らしながら、バイクは走る。胸元では即席で作った貝殻ペンダントが揺れている。レストランでおいしい昼食をいただき、見晴らしの良い城跡に登って眼下に広がる島と海の眺望を楽しんだ後、車の入れない細い路地を歩いて、とある民家へ。
●そこはとても古いお屋敷で、庭には立派な大木が茂り、空き家になっていて人の気配はない。いいおうちだねえ、と眺めていると、そこへ、ぬっと杖をついたご老人が現れる。家の持ち主が島を出て行った後、家の手入れをしに来ているというご老人は、91歳になるというのだがとってもお元気で、突然お邪魔したぼくたちに家の説明などをしてくれる。長寿にあやかって、おじいさんを真ん中に皆で記念撮影。
●裏庭から、開け放した部屋越しに表の小じんまりした庭を眺める。部屋の中は薄暗くひんやりしていて、木立に囲まれた庭は陽を受けて光っている。その境、縁側にちょこんと座るおじいの背中。静かな夏の午後。
●それから小さな商店街でお土産を買い込んだ後、いったん宿に戻る。ぼくは宿の入り口でUターンして来た道をちょっとだけ引き返し、愛車ハイビスカス号のスピードを上げる。アクセルを全開にして、細い一本道を駆け抜ける。


●ぼくらは船の上で夕焼け空を眺めている。一時間弱のサンセットクルージング。船底はガラス張りになっていて、色とりどりの魚たちや珊瑚が見える。船がダイビングスポットにさしかかると、突然海底が見えなくなって、海の色が変わる。青。コバルトよりも濃い、グランブルー。「宇宙みたい」とナビィが言う。
●それからぼくらはオープンデッキになっている二階に登って、水平線に沈もうとする夕陽を眺めながらワイングラスを傾ける。贅沢なひととき。


●夜は地元の方たちを交えての宴会。この居酒屋のオーナーでもあるひょうきんな会長さん、団長さん(とその奥さんと二人のお子さん)、ウシャ、ハニ、マニュ(ぼくと同じヤーナー)、島大工さん、ポニーさんといった面々が続々集まってくる。ぼくにとっては全て初対面の方たちばかり。それにぼくはデジカメを持ってないので(上の写真はマチが撮影したもの)、脳内デジカメを一枚一枚再生させながら書いているのだけど、メンバーに漏れはないはず。(ぼくはその場の全員にお酒をついで回ったので)。
●団長さんは昼間ぼくたちが走ってるところを見かけたらしく、変な眺めだったよ。と言う。「ぞろぞろバイクで走ってる集団がいるなと思って見たら、乗ってる人の顔が全員ニヤけてんだもん」。(それははたから見たら確かにちょっと怖い)。
●ぼくは来週に迫った撮影の連絡(急にスケジュールが二転三転)でときどき中座しつつも宴会はつづく。会長さんは飄々とした顔で次々に笑い話を繰り出しつづけ、ポニーさんはオチのないギャグを連発しつづけ(ウケたと言っては喜び、スペったと言っては泣き)、その間、マチはかわいいかわいいと言われつづけ(まだあげ初めし前髪をなでられ)、カミは独身男性からしきりに口説かれつづけ(しまいには既婚男性からも口説かれ)、ぼくは「二十代に見えない」としつこく言われつづけ(「じゃあ何歳に見えるんですか?」と聞くと返ってきた答えが、35歳(泣)。)、ジャーヤカはハニヤカから聞いた話を熱心にメモしつづけ(ていたと思ったら、いつの間にか微動だにしなくなり)、そんな中、突然座敷の電気が消え、真っ暗になる。
●襖が開き、ロウソクを立てたケーキが入ってくる。みなでハッピーバースデイを歌い、手に手にクラッカーを鳴らして、サブルヤカの誕生日を祝う(本当は三日前だけど)。このサプライズの仕掛人はグラ。サブルヤカには内緒で島に一軒のケーキ屋にバースデイケーキを発注し、クラッカーは東京から持参(荷物検査は無事パスしたらしい)。地元民一同からもプレゼントが手渡される。なぜかサブルヤカ以上に感激しているのが企画者のグラで、しきりに涙をぬぐっている。なんでお前が泣くんだよ、というツッコミを受けながら、サブルヤカとがっちり握手する。


●場所を変えての二次会の後、地元の方たちと別れて、ぼくとサブルヤカ、ジャーヤカ、グラ、ナビィ、カミの6人でラーメンを食べる。それから店を出て歩いてタクシーの営業所へ。ところが営業所はすでにしまっている。時刻は2時過ぎ。ちょっと遠いけど、宿まで歩くしかない。ナビィとカミが先頭。続いてグラ。それから自力で歩けなくなってしまっているジャーヤカにぼくとサブルヤカが両脇から肩を貸して歩く。
●サトウキビ畑にさしかかると、周囲に明かりは見えない。星明かり月明かりだけが頼り。星が本当に多い。六等星も見えているのではないだろうか。ぼくらは「晴れわたる日も雨の日も」と歌い、「幸せは空の上に」と歌いながら歩く。宿が近づくと、「あと1キロ!」とジャーヤカを励まし、最後は「サライ」を歌いながらゴール。どれだけ歩いたのか、もう時間の感覚をなくしている。
●今夜は島での最後の夜。このまま眠ってしまうのは惜しいので、ぼくらはコテージのそばにあるレストランの屋上に上がって、流れ星を見ることにする。コンクリートの上に思い思いに寝そべって、星空を眺める。時おり、長い尾を引いて大きな流れ星が流れる。そのたびに見た者の、「うわっ!」という歓声と、見逃した者の「どこどこ?」という声が交錯する。
●Tシャツ一枚のグラは、寒いから帰ろう、帰ろうと言い、「まだ願い事してない」とぼくは言う。カミが「お金、お金、お金」と連呼する。ぼくは星に何を願おうか考える。手に入れたいものをリストアップしようとする。でも、今、この瞬間にはなにも思い浮かばない。だからぼくは、そっとつぶやく。時間よ止まれ。


●長いなあ。この日は本当に長かった。次はまたいつ書けるかわからないけど(というか、今もこんな長文を書いてる暇があったら台本一本仕上げなければいけないのだけど)、次回はいよいよ島での最終日です。