小さなカシオの腕時計

リチャード・リンクレイター監督『ウェイキング・ライフ』をDVDで見る。これを恵比寿で見たのは2年前の年末だったと思い、過去の日記を繙くと、2002年12月30日にその記述があった。『ウェイキング・ライフ』のDVDが欲しい、そしてDVDプレーヤーが欲しいと書いている。その頃はまだDVDプレーヤーを持っていなくて、ようやく買ったのはその一年後、2003年12月31日のことだ。ぼくの持ち物リストの中では、DVDプレーヤーは新入りの部類に入る。
●『ウェイキング・ライフ』の中で、夢と現実の区別がつかなくなった主人公が、自分がカシオの腕時計をつけているのを見て、これは小学校の頃に持っていた時計で、だから今は夢の中にいるのだと気づくシーンがある。持ち物による個人史というものがあって、人はしばしば、過去と決別するために物を捨てることがあるようだけれど、ぼくは昨日も書いたように、まだ使える物を捨てようとは思えなくて、腕時計にしても、高校の時に買ったカシオのG-SHOCKを未だに使い続けている。この時計をつけていろんな所に行ったし、いろんなことをした。この腕時計一つにいろんな思い出が詰まっていて、そしてそれは今も、ぼくの左腕で時を刻み続けている。だけどやっぱり、いつかは動かなくなってしまうんだろうな。
●そのときがきたら、ぼくはこいつをハンマーで叩き割って、粉々になるまで破壊しようと思う。動かない時計、「時」に置き去りにされ、二度と「今」に追いつくことができなくなった時計ほど、みじめなものもまたないと思うから。