僕が旅に出る理由

ふたつめは今宵の月が僕を誘っていること
        くるり "ハイウェイ"

 ウィーンにオーストリア文学協会という小さな団体があって、フラウ・ブロノルドはそこの事務長だった。(中略)
 用件のあと、いつも軽くひとことつけ加えた。こちらの言ったことが、ユーモラスにもじってある。つづいて「いずれまた」といった意味の言い廻しでしめくくる。ちかく、また、会えること。フラウ・ブロノルドには、いつも「いずれまた」のつづきがある。なくてはならない。さもないと人生がつまらない。
        池内紀『世紀末の肖像』


●東京に帰ってくると、すっかり秋だった。急に寒くなって風邪をひきかけたけれど、なんとか持ちこたえる。(怒濤のスケジュールで今倒れるわけにはいかない)。
●島の浜辺で拾ってネックレスにつけていた貝殻は、机の上、モロッコで拾ってきた石の隣に置いてある。
●お土産に買ってきた黒糖焼酎は一本が空き、もう一本はまだ箱に入ったままで、今月うちで開かれる友人の誕生日パーティーのときに開けようかと考えてる。(しかしパーティーのテーマが「インド」に決まったので、焼酎はアリなのかというのが気になるところ)。


●いつだって誰かが誕生日を迎えていて、どこでだって月は見える。サブルヤカの誕生日祝いの夜に島のレストランの屋上で見た月は下弦の月で、フォアドの誕生日祝いの夜にモロッコのホテルの屋上で見た月は三日月で、沖縄のとある離島のおじいの誕生日祝いの夜に、おじいのうちの濡れ縁で見た月は満月だった。次はどこで、誰の誕生日を祝いながら月を眺めることになるんだろうか。
●行ってみたいところはたくさんあって、ウィーンでクリムトを見たいし、インドもまだ行ったことがない。でも島の団長さんの家(庭がゴルフ場!)でバーベキューもしたいし、ベルギーにもまた行きたい。悩ましいなあ。
●まあ、いずれまた。